FF85wkを使った小型の自作スピーカーを作ったのでレビュー

オーディオ

このブログを開設する直前、FostexのFF85wkという8㎝のフルレンジスピーカーユニットを使ったスピーカーを作りました。

Fostexの8㎝フルレンジというと、大型の箱に入れないとまともに低音が出なくて小型機には使えないというイメージでしたが、stereo誌に付属した付録ユニットが小型機でも使えそうだなーなどと調べているうちに、気づいたときにはこのユニットを購入していました。
いや、なんかバスレフ用って書いてあるし、付録のユニット買ってもこれも買うことになる未来が見えたので……。

「でもFostexだからなぁ。バスレフ用とか言われても全く信用できないぞ」と思いながら作成。

1か月の間エージングし、音も少しは落ち着いてきましたので、作ったスピーカーの紹介や気づいたこと、音の傾向などをレビューしてみます。

作ったスピーカーについて

このページ上部に表示している木のスピーカーがそれです。
大きさは横130×縦230×奥行170(mm)。
素材は15mm厚のラバーウッド(ゴム)集成材です。

板材は東急ハンズ渋谷店でカットしてもらい、ホットボンドで接着した後に80~320番のやすりを掛け、オスモオイルのノーマルクリアーで塗装しました。
使用ユニットは上記の通りFF85wk、ネットワークパーツはなしのフルレンジスピーカーです。


こう書くと、作ったことある人は「あーはいはい、そんな感じね。」とわかってもらえると思いますが、作ったことない人だと何を言ってるのかわからないですよね……。
作成中の写真も撮っておけばよかった。
接着してた頃はまだブログを作る気がなかったので何も記録を残していません。

バスレフポートは内径31Φのブナ木管を長さ63㎜にカットして使いました。
フロント板の厚みと合わせてバスレフポート長78㎜となり、計算上のダクトの共振周波数(fd)は90hzの予定となっています。
バスレフポートに木材を使うことに音質的に優位性があるかはわかりませんが、なんとなく木材で作っておくと気分が良いため、この規模のスピーカーを作るときはいつもブナ木管をカットして使っています。
これもハンズの渋谷店に売っているので、一緒にカットしてもらいました。

ブナの木管はこんな感じ。接着は楽です。

設計について

spedで今回のスピーカーをシミュレートした画面。不安だったので、fdは少し高めの90で設計。

スピーカーの箱はなんでもいいというわけではなく使用ユニットに合わせる必要があります。
私は専門の技術者でも誰かに教えを受けたわけでもないため、詳しい設計ノウハウはありません。
いつもspedというソフトに頼りきりです。

無料で使用でき、直感的に操作が可能。
誰でもスピーカーのシミュレーションができる、素晴らしいソフトです。
作者様のサイトはこちら

シミュレーションはあくまでも目安であり万能ではないのですが、あるのとないのとでは全く状況が違います。
このソフトがなければ私はスピーカー自作には走らなかったでしょう。
そういう意味では恐ろしいソフトとも……いやなんでもないです。

かかった費用・使ったもの

単純な材料費だと2万4千円くらいです。
高いというか安いというか、人によって意見の分かれるところかと思いますが、実際にはスピーカーターミナルや内部配線、吸音材は以前作った際の余りが転がっていたのでそれを使ってます。
実際の支払いは2万円程度でした。

え?人件費?聞いたことない言葉ですね……。

部品だけに絞ると費用はこんな感じ。

木材(総量含むが交通費含まず)1万円弱
スピーカーユニット(FF85wk)2個1万円弱
吸音材(サーモウール900円分くらい
スピーカーターミナル (丸形埋め込みタイプ 2個)900円くらい
内部配線(オヤイデ 3398-16TW1000円くらい
ファストン端子(オーディオテクニカ TL205M 8個)700円くらい
合計24000円くらい
今回のスピーカー部品の費用概算

スピーカーターミナルはamazonで買ってるのですが、同じようなものが売られていてよくわかりません。
もうちょっと高級そうな物にしたいのですが、メンテナンス性も考慮してこれを使っています。
ファストン端子も、使わずにはんだ付けが良いという意見も多いと思いますが、内部の振動のためかはんだが取れて断線することが多いため、ファストン端子で接続するようになりました。
(注:ファストン端子は同じサイズでもスピーカーに使える製品と使えない製品があり要確認。リンク先の製品は大丈夫ですが、同じサイズでもスピーカーに刺せないことあります。)

上記以外に、木工用ボンド(タイトボンド)やオスモオイル(ノーマルクリア)、紙やすりを使っています。
また、固定用のハタ金が4本くらいは必要になりますので、そういった工具を購入する費用も考慮すると、初回は費用が多めにかかります。
(オスモオイルは手持ちがあるので使っていますが購入単位が大きく高いので、ワトコオイルとかでも良いはずです)

あと、超重要なのは作業スペースです。
接着はともかく、やすりがけをワンルームの部屋で行ったりすると大変なことになります。
かといって、住宅密集地で外で作業してるとうるさくて目立ちますので、なかなか悩ましいところです。
もくめやぎ宅は集合住宅でベランダでの作業は目立つため、最近は風呂場や洗面所で作業しています。

使い道

もちろんアンプにつなげて音楽を聴くのですが、今回はPCモニターの脇に置いてデスクトップPCのスピーカーとして使用するために作りました。
よく電気屋で売っているPC用のアクティブスピーカーと違ってアンプが必要になるので、TEACのAI-301DAというアンプで接続しています。

モニターの周囲に置いた所。撮影が下手だったのか歪んで見える……。

下手な写真で申し訳ないですが、こんな感じに設置しています。
アンプは以前は机の上にあったのですが、リモート会議の邪魔になるので床置きにしています。

実は今回のスピーカーは4台目で、いままでも同じような形状のスピーカーを作っては、このポジションに設置してきました。
外観の評価は個人差が大きいと思いますが、もくめやぎはこういう木質感の強いスピーカーが好みなので自作したものを使っています。

音質について

このスピーカーを作るにあたって、今回は失敗するリスクが高いと思っていました。
Fostexの推奨箱が、内容積、バスレフポートともに今回の製作品より一回り大きかったためです。
元々Fostexのスピーカーって推奨箱に入れても高い音重視ってイメージでしたので、さらに小さい箱では低音が弱すぎる可能性が高いと考えていたのです。
ですので、冒頭に書いたように疑いながら作りました。

で、肝心の出来上がりの音ですが、最初に感じたのは

「高い音が強くて低い音が出ない。情報量が多いうるさい。やっぱりFostexの音じゃん!!」

うーん、ダメかな?

ただまあ、以前に試したことのあるFE87eとかと比べるとだいぶ低音が出る感じはあり、数日で落ち着いてきたので1か月ほどそのまま使いました。(うるさい感じはしたが使えないほどではなかった)

1か月後の感想

「うん。やっぱり高域が強い!!

‥‥‥だめじゃん。

ただ、よく聞いてみると低域はきちんと設計通りに出ている感じはしていました。
あくまでも、高域が強すぎるのです。

これはもう、バッフルステップ補正回路の練習台に使うしかないかと思っていたのですが、ふと道具箱に、ビクターのウッドコーンスピーカーキットについてきた、使い道のわからない黒い吸音材をみつけました。
この黒い吸音材、ちょっと入れるとすぐに元気のない音になるのでほとんど使わずに余らせていたんです。

フルレンジスピーカーって箱の中の高い音が漏れてきやすいためか、吸音材を多く入れると高域が落ちつきます。
今回は、どうせうるさい音になるだろうと思っていたのでサーモウールを多めに入れておいたのですが、それでもだめ。
ところが、こんなにうるさいならちょっとくらい元気がなくなった方がいいだろうということでこの黒い吸音材を4cm角くらいに切った破片を入れたところ、うるささが減退し普通に聞けるバランスになりました。
偉いぞ黒いやつ。

ビクターのキット黒いやつ。ピンクとか赤とかフェルト状のゴミみたいのがついてますが、最初からです。

高域の強さは少し残ってはいますが、高い音から低い音までしっかり出ています。
低域はたしかに100hzより下ましっかりででている感じがしますし、高い音もツィーターなしでもいいじゃんって思えるくらいにしっかり出ています。
低域に関しては、ゆったりとした低音ではなく、俊敏な低音という感じですね。
少なくとも、設計時に狙った程度にはしっかり使えるようになったと言えそうです。

音調は、かなりはっきりしたタイプ。
温かみのある音色でいい感じにまとめるという感じではありません。
広い帯域で分解能が非常に高いです。
各楽器がそれぞれに自己主張してくるため寒色系と言っていいのかわかりませんが、緊張感があり、リラックスして聞く雰囲気ではないです。
まあ、この辺りは慣れや使いこなしの問題かもしれません。

現時点で感じる難点としては、人の声があまり得意ではないように感じる点です。
過去、近いサイズのユニットとしてTangBandのW3-582SC、DAYAUDIOのSA/F80amg,VifaのTG9FDを使ってきましたが、それらと比べると印象がいまいちです。
音色はともかく、声にもシャカシャカした音がまとわりつく雰囲気を感じるのです。
ボーカルが引っ込んでるというわけではなく前に出てくるので、帯域的には出てると思うんですけど。

このシャカシャカは全体に漂う緊張感にもつながっているように思えます。
これが振動版固有の音だといわれるとちょっと困りますね。
エージングや吸音材の調整で消えてくれるとよいのですが。

まとめ

そういうわけでFF85wkを横130×縦230×奥行170(mm)の小型箱に押し込んだ結果ですが、

  • 高域はしっかり出る。質的にはツイーターの方が良いが、追加でつけようとは思わないはず。
  • 卓上で使用する限り、低域はポート開口径31Φ、Fd90Hzでもまあまあでている。細かいこと言わなければ、JPOPやアニソンは普通に聴ける。ゲームの効果音も問題なし。
  • 音色はクール。音数は多い。
  • 吸音材を適切に入れないと高域がうるさくなるので吸音材の選択は大事。よくある白色のウール系だけだとだめかも。箱が小さい影響で高い音が漏れやすいので、多めに入れた方が良い。

という感じです。

箱がもう少し大きければ、ここに出てきた問題は自然と改善するのかも入れません。
あくまでも小型の箱に入れて卓上で使った場合の話です。

今回の製作では黒い吸音材が救世主のように活躍してくれましたが、この黒い吸音材がどこに売ってるのかよくわからないのも問題ですね。
個人で使ってる分には永遠に使いきれなさそうですが……。
メーカーのページには粗毛フェルトと書いてありますが、ニードルフェルトの仲間でしょうか?
ネット上のニードルフェルトの評価を見ると高域が落ちると書いてあるのでそうなんじゃないかと思うのですが、ニードルフェルトを自分で買って使ったことないのでなんとも言えません。

最後に、これからFF85wkを使って何か作ろうとしている方に工作上の注意としてお伝えしておきたいのですが、今回、メーカースペック上の取付穴開口面積73Φのところ余裕を見て74Φで開けておいたのですが、74Φの穴だと穴が大きすぎて、付属のパッキンがセットできません
パッキンを使いたい場合、73Φで開けておくことをお勧めします。
経験的にはパッキン使う方が音は落ち着くので、ひょっとしたらこれが使えていれば初めから音が安定していたかもしれません。

その後吸音材を調整しました。

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