スピーカーを自作する時にいつも気になるのは、「内部配線は何を選べば良いのか?」という事です。
Google検索しても「吸音材やネットワークの方が大事なので配線材は気にしない」と公言されている方が多いようですが、選べるなら最適なものを選びたいのが人情というものではないでしょうか?
実際のところ、好みや使用対象にもよりますしそこまでの経験があるわけではないので”最適”なケーブルを提示するというのは難しいですが、知っていることをメモしておきます。
半分は自分用のメモです。しばらく自作していないと忘れちゃうので……。
求められる性質は
スピーカー内部で使用するのに適した性質としては、適正な太さ、曲げやすい事、(はんだ付けするなら)絶縁材の耐熱性能あたりが大事と感じています。やったことある方はよくわかっていると思いますが、ケーブルの柔軟性は超重要です。
個人的には太さはAWG16くらいが好き。AWG18だと若干低域が足りないように感じることがあり、AWG14だと作業難易度が上がります。
メーカー完成品の中にはツィーター用、ウーファー用で線材を分けている機種もあるようです。
上記の画像は2芯であっても丸いシースがあるタイプなので使いにくいです。シースを剥いて内部の線だけ使うという手もありますが、コスパが悪いですし音質傾向も変わってしまうでしょう。ただ、”どうしても特定の素材を使いたいがこのタイプのケーブルの内部にしかない”という場合には裂くのも選択肢になります。
こういう、平行2芯タイプで柔らかいものは使いやすいです。
配線材として売っているものはこの条件を満たしていることが多いですが、細いタイプが多いですね。
接続方法はメンテナンスの関係で、はんだ付けよりもファストン端子での接続の方が良いと思います。ただ、どのファストン端子が良いのかはよくわかりません。ニチフの端子でよいのか、金メッキ品がどのくらい意味があるのかは未確認です。
メーカーの採用実績
気になりだすと市販のスピーカーの内部配線も気になるもので、リリース情報に書いてあることや聞いた話などをまとめてみました。メーカー名だけで製品の型番がわからないものは省略しています。
リンク先は販売ページになっています。
Fostex SFC103
同社GX100,G1300MGなどの内部配線。
ちょっとだけ試しましたが締まった傾向の音だった記憶があります。G1300は銅・銀合金の単線でした。現行機種のGX100BXは銅・銀合金同芯撚り線のようです。
47研 0.65mm単線
同社のスピーカー,Model 4722の内部配線。実物を見るとかなり細い。
試しましたがスピーカーケーブルとして使ったときと同じでかなりスッキリした音になります。他と違いすぎて違和感を感じました。耳が慣れれば良いかもしれません。
QED PROFILE 79 Strand
Q-Acousticsなどで採用実績あり。Harbethも使っているようですが、明らかに別の線材を使っているモデルもありすべての機種ではないようです。柔らかいので普通に使えそうですが、AWG14でやや太めなので注意が必要です。英国の複数のメーカーで推奨ケーブルに指定されているようなので、実際にはかなりの数のモデルで使われてきたのではないかと思います。
BELDEN 9497
16AWG 。昔、パストラルシンフォニーというメーカーのスピーカーが内部配線に使っていたような記憶があります。真似して使いました。8470と同じ太さですが、こちらの方がツイストがきつく外皮も硬いので使いにくいです。ただ実際に使ったことはあり、無理ではないです。締まった低域がグイグイ出て高域はあまり伸びないですが、勢いがあるので単独で聞いてれば不足を感じにくいように感じます。
Inakustik LS-502
クリプトンのKX-3,KX-5など、同社の古めのスピーカーの内部配線。型番は公表されてないですが見た目からこれだと判断。スピーカーケーブルとして良かったので配線にも使おうとしたのですが、硬すぎて失敗しました。KX-3の模型を見るとかなり頑張って曲げてるようです。外側の黒い外皮を裂いても内部の線も固めでした。あと、ケーブルの方向性を判断する印がどこにもないのでそういうのを気にする人には向きません。
クリプトン SC-HR1500
最近のクリプトンのスピーカーのウーファー側で採用。高いので挑戦する気にならない。公開されてる模型を見ると相変わらずシースつけたまま配線しています。LS-502で懲りたのでもう挑戦しない。
クリプトン SC-HR1300
最近のクリプトンのスピーカーのツィーター側で採用。マグネシウムのありなしで音の傾向に違いがあると思いますが、違和感ないのか興味はあります。だが挑戦はしない。絶対にしないぞ。
audioquest SLiP XTRM 14/2
ELACのBS312 Jubilee で採用。日本で売ってない?
Van Den Hul SKYLINE (VDH-T8)
ELACのBS243BE,BS192などで採用。輸入元のページを見ると400LINEまでこれを使っているようです。あまり良い評価を見たことないですが、太さ、柔らかさという点では素人でも使えるケーブルだと思います。よく見かける製品でしたがネット上で売ってない。終売でしょうか?
Chord Company Rumour2
ELACの310IB,FS247 SEなど過去のモデルで採用。現在モデルチェンジしてRumour2Xとなっているが輸入されてない?Chordの切り売りケーブル自体もネットで買えないような気がします。個人的に好きなメーカーなので頑張ってほしい。
DALI SILVER PLATED COPPER
DaliのMenuetSE,Rubiconシリーズなどの配線はこの名前のケーブルですがどれも同じものなのかはわかりません。たぶん売っていません。
モニターオーディオ PUREFLOW2CORE
以前はモニターオーディオの内部配線として¥2000/mくらいで販売されていました。Silverシリーズ以上はこの線だったようです。最近は”Pureflow Silver plated OFC copper”なる線材に変わったようですが、Silverがつく前から銀メッキ線だったような……。
こうして見ると、ELACは積極的に線材を公表していますね。そういうマーケティング戦略なのでしょう。メーカーが変わりまくってますので、こだわってないようにも見えてしまいますが。さすがに製造現場でスピーカーケーブルをケーブルを裂いてるとは思えないので、同じ線材を調達してるのだと思います。ヤマハも、単線だとかPCTripleCだとか線材にこだわってるような発信をしてますが普通に売ってるものではなさそうです。
その他使えそうな製品
使ったことあるもの、ないものが混じっています。
ParcAudio DCP-W001
モンスターケーブル製で、ParcAudio社長が聞いてみて良かったので売りだしたそうです。ファストン端子の大きさが固定なのでご注意を。そのままだとFostexのFF85wkには使えません。
BELDEN 8460
18AWG。ヤフオクで売られているエンクロージャーでよく使われています。細いせいか低域が少し弱く、AWG16の8470の方が低域も出てバランスよいと思いますが、作業性という点では細い方が楽。両者とも導体を見ると錫メッキでギラギラしそうですが、少し押し出しが強いものの意外と普通の音です。
BELDEN STUDIO717EX
14AWG。音質面で評判がよくケーブルも柔らかくて最適そうに見えますが、このシリーズは以前からケーブル内部に錆が発生するという報告があります。密閉性が悪い?見えないところに使うのはリスクがあるように思います。
オヤイデ 3398-16
16AWGですが18のものやツイストされたものもあります。重心が低めでやわらかい低域が出ますが、中域、高域も普通に出ていてワイドレンジだと思います。耐熱性が高く、作業性も良いです。導体が精密導体“102 SSC”なので、(説明読んでも普通の銅な気もしますが)特殊な導体が好きな人にもお勧め。ただこの線材にも癖というか特有の音色はあるようで、イヤホンのリケーブルに使ったら自作スピーカーと同じ音色になりました。
モガミ電線 NEGLEX 2516
16AWG。そんなに固くはないので使えるはず。ちょっと試した限りではすっきりした音だった記憶はありますが、聞きこんではいないのでなんとも。低域の量感に関しては、オヤイデの3398の方がありました。
ZONOTONE 6NSP-1500 Meister
15AWGくらい(1.55sq)。使ったことないですが、触った限りでは柔らかいので使えると思います。4種の複合素材です。複合素材って浪漫があって良いですね。ただ、使ってみるまで音が全く想像できないのが難点です。
ナノテック・システムズ SP#79 Special
16AWGくらい(1.3744sq)。金銀混合コロイド液を銅の表面に塗ったケーブル。実際に内部配線として使ったことがありますが、銅線の一本一本が太いためはんだ付けがやりにくかった印象があります。ファストン端子とカシメで接続なら問題ないでしょう。中域中心に太い音が出ますが高域がちょっと伸びが悪かった記憶が。特有の音色で魅力はあります。導体がHIFCのSP#79 SVもあります。
オーディオテクニカ AT-ES1400
17~16AWG(1.2Φ)の単線。かなり柔らかく、はんだ付けで使ったことあります。個人的には音が硬くて暗い感じがして好きではないのですが、世間の評価はいいようなので単線好きの方は候補になるかと思います。
オーディオテクニカ AT-RS150
14AWG。レグザットというカーオーディオ用ブランドですが、”PC-TripleC+OFC線材”、”マグネシウムウィスカー+チタン入りレジン のデュアルハイブリッドインシュレーションシステム”と、スペック上はすごい。スピーカー内部も結構な振動にさらされているので良いかもしれません。
オーディオテクニカ AT-RS180P
14AWG。TripleC+PCUHD+OFCのトリプルハイブリッド。レグザットはこれ以外にもラインナップがたくさんあり、このスペックでなぜこんなに安いのかよくわかりません。カーオーディオ用ケーブルって、そんなにたくさん売れるのでしょうか?
武藤製作所 オーグライン 1.2mm径
金と銀の合金、オーグラインの単線。高いですが、このくらい太ければスピーカーケーブルとしても使えるのではないでしょうか。0.8mm径のをRCAケーブルとしてしか使ったことしかないですが、見通し良く奥行きと暖かみのある音で、銀とは全然違うように感じました。リンク先のインパルスではスピーカーの内部配線に使っているようなので使えるとは思いますが、単線なので端子に負荷がかかりやすいかも。
まとめ
だらだらと候補をリストアップしてきましたが、要するに1本で売ってる配線材か2本の平行線のスピーカーケーブルで、太さが適正、かつ柔らかいものであれば使用可能です。時々、平行2芯タイプのくせにすごく硬くて使えないことがあるのであらかじめ確認したほうが良いでしょう。
基本的にはスピーカーケーブルに使ったときと同じような変化があるので、先にスピーカーケーブルとして使ってみてお気に入りのケーブルを探す方が良いと思います。内部配線だけの交換にすれば長さが少なくて済むので経済的ですが、交換が面倒ですし事故でユニットをダメにする可能性があります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ここでの情報がどなたかが沼にはまる助けになれば。